森から海へ、そして再び森へ。自然の大きな循環とともに…。
海の栄養分が陸上植物へ供給される仕組み(鮭よ帰っておいで!)

科学的見地について

「ほっちゃれ」は、キツネやカモメ、カラスなどの哺乳類、鳥類などの餌になります。
更に、食べ残された「ほっちゃれ」は川虫などの昆虫類に食べられるなど、海の栄養が陸・川の栄養につながっていることが近年の研究で明らかになってきています。

ほっちゃれ


ほっちゃれの栄養が陸に届いている!

海の栄養が陸につながる科学的検証について

自然界には100を越える元素が存在しますが、天然の追跡指標が存在することが最近の調査でわかってきました。
それぞれの元素には同位体が存在します。同位体とは原子核の陽子数が同じで中性子数が異なる原子のことで、 この同位体の存在比率を同位体比といいます。 同位体比を分析することで、どこにあったものなのかを推測することができます。
例えば、動物の追跡には動物に含まれる炭素を、土壌の追跡には土壌に含まれる窒素を、酸素や水素からは 産地や原産国の追跡をすることができることがわかってきました。
この仕組みを応用し、サケが遡上する河口の土壌と、上流域の土壌に含まれる窒素(窒素安定同位体比)の分析を行うことでサケ(ホッチャレ)の栄養が陸の栄養につながっていることが確認できるのです。

北海道立総合研究所 林業試験場 長坂有・晶子氏らは、北海道のサケが遡上するある河川の下流域、上流域の陸地の土壌、そして遡上しないエリアの土壌の3区間の窒素安定同位体比を調査しました。
通常亜寒帯地域の窒素安定同位体比(δ15N=デルタ15エヌ)が0(パーミル(1/1000)またはマイナスの値を示すことに対し、サケ科魚類では、プラスの値(+10?14パーミル)を示す特徴があります。
つまり、上流域の土壌がプラスであり、遡上しないエリアの土壌が0またはマイナスの値であれば、下流域のサケの栄養(ホッチャレ)が上流域の陸地に運ばれたことがわかります。

ホッチャレ栄養の運搬役

1、きつね、からす、ふくろう、くま、わしなどの動物やこの動物の糞を栄養とする微生物、ホッチャレを直接たべる川虫、川虫を餌とする川魚など。

【解説】
右の図は、北海道南部のサケ遡上河川の河畔に生育するヤナギの葉の窒素安定同位体の調査です。縦軸は窒素安定同位体比で上流、下流ともに+3パーミルの高い数値を示しています。しかし、遡上エリア外の土壌では0もしくはマイナス値になりました。

サケが遡上する世界の分析例では、アラスカの川、カナダの川で北海道同様にプラスが示されていることがわかります。つまり、北海道だけの現象ではないことがわかります。

このように、海の栄養が陸の栄養に巡回することが科学的に証明され始めています。